コンテンツへスキップ

小沢麻結句集『雪螢』(ゆきぼたる)
2008/6刊行

◆ 第一句集
雪螢とはまことに
あえかなる存在である
しかし、その小さないのちには
思いがけない強さがある
ピーター・パンの冒険心と
ニンフの若々しさをあわせ持つ
作者の詩ごころが
『雪螢』一巻の随処に
ちりばめられている 
(行方克巳)

「月探す表参道交差点」都会の賑やかな交差点で、信号を待ちながら、或いは歩いている途中でも、ふと月を探す。その思いは日常に詩を求める思いに似ている。雑踏の中の一人でありながら、中空の月を心に持つ時、人は句ごころを胸に抱く。
(西村和子)

◇行方克巳選
もう前も後ろもなくて芒原
元気あとは山の絵の暑中見舞
日本も寒いらしいねと初便
かはい気のなくて結構春の風邪
葉桜や眩しげに訳聞かれたる
目覚めても目覚めても夜風邪の床
踏ん張つて蜥蜴の尻尾再生中
約束を悔やむ手袋なきを悔やむ
月探す表参道交差点
式典の空も会場原爆忌

 

西村和子著『季語で読む源氏物語』
2007/9刊行

源氏物語は季節すなわち春秋の物語であると言えよう。物語の筋を縦糸とするならば、季節描写は横糸となって背景を織り成している。それが出来事に豊かな彩りと深い奥行きとを与え、季節の風や雨や雪が、人々の心のうちを象徴することにもなる。ここに鏤められた季節の言葉に、のちの俳諧の季題、現代の俳句の季語の源を見る思いがする。 --季語という視点から源氏物語を読み解いた本邦初の画期的内容 。

目次

初音―六条院の新春
花紅葉―初恋の人
雪明り―凍る思い
汀の氷―ひき離された母娘
毛皮―末摘花は石長姫
紅梅―知る人ぞ知る
垂氷―雪の中の逢瀬
若菜―緑の生命力
沫雪―閉め出された源氏
深山の桜―走り出てきた美少女〔ほか〕

行方克巳・西村和子共著『秀句散策』
2007/6刊行

◆ 俳句入門書
選は創作なり・・虚子
「知音」一10年間の秀句をあたたかく丁寧に解説。実作を志し、更なる俳句の上達を望む人へ向けた魅力溢れる入門書。 季題別索引付

ここにはおのずから私たちの俳句観が語られている。毎月寄せられた各自の自信作の中から、秀句と認めた作品を丁寧に鑑賞することで、私たちの目指すべき俳句を説くよう努めた。私たちが考えている秀句の具体例がここに集められたと言ってもいい。作者は言うまでもなく、これから俳句を学ぼうとする仲間たちも、ここに取り上げられた作品を道しるべとして、歩んで行っていただきたい。(あとがきより)

母が待つ小さき駅の秋日和
胸のすく音の駆け抜け競べ馬

江口井子句集『こゑに』(こえに)
2007/1刊行

万葉の世への愛とあこがれが、野の花のように咲き乱れ、ひとりの女性としての春秋が一途にうたわれる。1998年から2006年までの作品を収録した第2句集。

燈火親し「方丈記私記」ひもとけば
数珠玉やこの畦道が古代みち
春渚ジョニージョニーと少女が呼ぶ
かへるさの秋篠川の月明り
読初はこゑに茨木のり子の詩
独り身の気楽をいはれ燗熱し
母の忌や梅酒の琥珀色深め
触られてくすぐつたさう追儺鬼
横顔のをとめさびけり卒業歌
白菖蒲ほぐるる力もて揺るる

 

西村和子第四句集『心音』
2006/5/23刊行
(第46回俳人協会賞受賞)

第3句集以後、約10年間の作品400句を収めた第4句集。
紙風船息吹き入れてかへしやる
黒谷の松吹く雪となりにけり
水よりもつめたき蜆洗ひけり
囀のひと色にしてはなやげる
水音と虫の音と我が心音と

~あとがきより~
第3句集の後の10年間の作品から400句を収めた。
この10年の間に2人の息子が巣立ってゆき、父が逝き、33年間師事した清崎敏郎先生が亡くなった。行方克巳さんと共に「知音」を創刊し、14年間暮らした関西を離れ東京での生活が始まった。
様々なことがあった10年だったが、その時その時をもっとも鮮明に思い出させてくれるのが俳句だ。どれにも愛着があるが、

水音と虫の音と我が心音と

の一語をもって句集名とした。私にとって俳句とは、心音のようなものかも知れないと思うからである。
句稿をまとめた後、33年の春秋を共にした夫が他界した。私の人生のひとつの季節が終わってしまったことを実感している。

 

西村和子著『添削で俳句入門』
2006/1/25刊行

添削に学ぶ俳句づくり
上達のコツを大公開!

俳句に興味を持ち、俳句を作ったこともあるが、もっとよい作品にしたい。そんな俳句好きに贈る入門書。豊かな日本語を身につけよう、最初に感じたことを大切に、無駄を省く……など、よい作品を作る21のコツを、ベテランの俳人が実際の添削例をもとにやさしく解説する。