村地八千穂句集『知足』
2005/1刊行
初硯知足常楽筆太に
平らかに凍て滝壷を封じたる
さよならと踵かへせば花疲
子ら遠く夫亡く久し釣忍
深雪踏む彼方に希望持つごとく
生きている足跡を記した句集。80歳を期に、平成4~16年の作品を収録。
客観写生にそれぞれの個性を
初硯知足常楽筆太に
平らかに凍て滝壷を封じたる
さよならと踵かへせば花疲
子ら遠く夫亡く久し釣忍
深雪踏む彼方に希望持つごとく
生きている足跡を記した句集。80歳を期に、平成4~16年の作品を収録。
「虚子は18歳で京都に遊学以来、終生、京都を愛し、小説「風流懺法」をはじめ、随筆、紀行文を残した。祇園から比叡山まで、著者は20年がかりで虚子の作品の現場と人間模様を追跡し、そこで繰り広げられたドラマを再現する。虚子研究に新生面を開く意欲作。」
読みすすんで行くと朝露のようにきらりきらりと光るものがある―それは作者の俳句への思いそして家族への愛である。あえかな光だがどんな宝石よりも美しい―第一句集。
福寿草微笑み返しくれにけり
寄つて来し猫にやるものなく寒し
師の影のふと見えにけり鑑真忌
露草の一つ一つの希望の瞳
雲走る走る雲雀のこゑ散華
濤声もみどりなすなり鑑真忌
秋風に後れ先立つほどのこと
つはるてふこと怠らず冬桜
城を盗らずをみなをとらす花の雨
祭浴衣老獪にして汗かかず
椎の実や見えざる轍われを轢く
千秋といふはいちにち落葉踏む
海鳴るぞ山鳴るぞ春ゆくなべに
武者ねぶた瞋恚も恋も真つ赤ぞよ
~あとがきより~
平成13年4月から1年間の休暇を得て京都を中心に多くの祭りを見て廻った。いきおい本書の内容として祭の句が多いことから句集名は躊躇なく「祭」とした。
書家の津金孝邦さんからその「祭」の一字をいただいたことは、大いなる知音を得た思いであり、これにまさる喜びはない。
本句集が成るにあたって、さきの自注句集に引き続きて「樹の会」の仲間の全面的なバックアップを受けた。
また、角川学芸出版のスタッフのみなさんには短期間に集中して行程を進めていただいた。ここに記して感謝したい。
月見草胸の高さにひらきけり
夏シャツの胸ポケットに何もなし
若草に我がゴンドラの影進む
ウインドに映れる我等夏の雨
春暁の乳欲る声を漲らせ
泣きやみておたまじやくしのやうな眼よ
つまづきし子に初蝶もつまづきぬ
風邪の子の力なき眼が我を追ふ
気に入りのおもちや召し寄せ風邪の床
葱きざむ子の嘘許すべかりしや
粽解くにも弟の負けてゐず
蜜柑むき大人の話聞いてゐる
愚痴つぽく皹が又疼き出す
秋刀魚焼くレモンのやうな月が出て
ぜいたくは出来ぬ暮らしの柚子一つ
麦笛や夫にもありし少年期『窓』
花水木明日なき恋といふに遠し『窓』
来ればすぐ帰る話やつりしのぶ『かりそめならず』
ひととせはかりそめならず藍浴衣『かりそめならず』
職場の同期会の旅行で俳句に出会った仲間が、「知音」の初心者だけの句会「ボンボヤージュ」の卒業と還暦を記念して刊行。7人の個性が凝縮された合同句集。
『無言劇』から『昆虫記』まで、既刊句集全三冊の作品を季題別に収録。作品理解の上で更に役立ち、実作者にとっては季題を通して俳句を学べる格好の一書。
◆ 季語別句集シリーズ4
『無言劇』から『昆虫記』まで、既刊句集全三冊の作品を季題別に収録。
作品理解の上で更に役立ち、実作者にとっては季題を通して俳句を学べる格好の一書。
春の宵 春宵
春宵の分針少し遅れゐる 無言劇
春宵の宿のもの音聞かれけり 無言劇
春宵やすでにはるけくボブ・デュラン 知音
雪 吊
雪吊の縄にはりつき雪凍る 無言劇
雪吊のたるみては風篩ふなる 昆虫記
雪吊の髻を風の一と掴み 昆虫記