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江口井子句集『こゑに』(こえに)
2007/1刊行

万葉の世への愛とあこがれが、野の花のように咲き乱れ、ひとりの女性としての春秋が一途にうたわれる。1998年から2006年までの作品を収録した第2句集。

燈火親し「方丈記私記」ひもとけば
数珠玉やこの畦道が古代みち
春渚ジョニージョニーと少女が呼ぶ
かへるさの秋篠川の月明り
読初はこゑに茨木のり子の詩
独り身の気楽をいはれ燗熱し
母の忌や梅酒の琥珀色深め
触られてくすぐつたさう追儺鬼
横顔のをとめさびけり卒業歌
白菖蒲ほぐるる力もて揺るる

 

津田ひびき句集『玩具箱』
2005/3刊行

夜桜や嫁の仕事を打遣りて
貝の華とはピカソかな太郎かな
昼顔の幸せさうに泣きさうに
ふしだらという香水のあらまほし

玩具箱をひっくり返したように、きらきらしている、いつまでも子供の心を失わない大人の俳句集。

村地八千穂句集『知足』
2005/1刊行

初硯知足常楽筆太に
平らかに凍て滝壷を封じたる
さよならと踵かへせば花疲
子ら遠く夫亡く久し釣忍
深雪踏む彼方に希望持つごとく

生きている足跡を記した句集。80歳を期に、平成4~16年の作品を収録。

 

上野文子句集『露華』
2004/7刊行

読みすすんで行くと朝露のようにきらりきらりと光るものがある―それは作者の俳句への思いそして家族への愛である。あえかな光だがどんな宝石よりも美しい―第一句集。

福寿草微笑み返しくれにけり
寄つて来し猫にやるものなく寒し
師の影のふと見えにけり鑑真忌
露草の一つ一つの希望の瞳