カテゴリー: 知音の本棚
田中久美子句集『風を迎へに』(かぜをむかえに)
田中久美子句集『風を迎へに』(かぜをむかえに)2007/9/26刊行
◆ 第一句集
少し淋しげで
少しつまらなそうな
詩を書く若い女性が
俳句と出会って
退屈しなくなった
よき伴侶を得て
ほんとうの詩人になった
彼女に訪れた風を
祝福したい
(帯・西村和子)
「太テエ女ト言ハレタ書イタ一葉忌」
一葉の素顔を説く多くの評論家は、彼女のなかなかのしたたかさを指摘する。しかし、誰が何と言おうと一葉は一葉であり、その文学の芳しいことに何ら変わるところはない。(序・行方克巳)
太テエ女ト言ハレタ書イタ一葉忌
夢ばかり見てゐる初夢もなく
白地着て風を迎へにゆく日かな
猫はタマ犬はタローよ福寿草
浜昼顔見てさびしくて手をつなぐ
かなかなや断ち切るごとくテレビつけ
薔薇咲かせ母の美しかつた頃
息かけてビル倒さうか小六月
生きてゐることに気づかぬ雛かな
鳴神の訪れたりし夫の留守
(西村和子選)
江口井子句集『こゑに』(こえに)
2007/1刊行
万葉の世への愛とあこがれが、野の花のように咲き乱れ、ひとりの女性としての春秋が一途にうたわれる。1998年から2006年までの作品を収録した第2句集。
燈火親し「方丈記私記」ひもとけば
数珠玉やこの畦道が古代みち
春渚ジョニージョニーと少女が呼ぶ
かへるさの秋篠川の月明り
読初はこゑに茨木のり子の詩
独り身の気楽をいはれ燗熱し
母の忌や梅酒の琥珀色深め
触られてくすぐつたさう追儺鬼
横顔のをとめさびけり卒業歌
白菖蒲ほぐるる力もて揺るる
松井秋尚句集『海図』
2006/7刊行
村地八千穂句集『知足』
2005/1刊行
初硯知足常楽筆太に
平らかに凍て滝壷を封じたる
さよならと踵かへせば花疲
子ら遠く夫亡く久し釣忍
深雪踏む彼方に希望持つごとく
生きている足跡を記した句集。80歳を期に、平成4~16年の作品を収録。
上野文子句集『露華』
2004/7刊行
読みすすんで行くと朝露のようにきらりきらりと光るものがある―それは作者の俳句への思いそして家族への愛である。あえかな光だがどんな宝石よりも美しい―第一句集。
福寿草微笑み返しくれにけり
寄つて来し猫にやるものなく寒し
師の影のふと見えにけり鑑真忌
露草の一つ一つの希望の瞳
ポシェットの会『ポシェット合同句集』
2004刊行
職場の同期会の旅行で俳句に出会った仲間が、「知音」の初心者だけの句会「ボンボヤージュ」の卒業と還暦を記念して刊行。7人の個性が凝縮された合同句集。
松原幸恵句集『天窓』
2003/3刊行
高橋桃衣句集『ラムネ玉』
2002/10刊行
◆ 著者第一句集
『ラムネ玉』は、さわやかでなつかしい音がする。
『ラムネ玉』は、空の色、水の色、流れゆく時間の色でもある。
『ラムネ玉』を透かして見た一句一句に、私は桃衣さんの魂のしなやかさを感じる。
行方克巳(帯文より)
俳句の魅力に目覚めた時、人は内なる声に気づく。その声を表現する手段を得て、自分自身を再確認するゆくたてが、この句集には収められている。
西村和子(序文より)
ファインダーに入り切れない花野かな
水底の空を駆け抜け寒鴉
亀の子の泳ぐ手足のやはらかし
蝶々の夢の続きを飛びわたり
いつまでもルオーに佇てる冬帽子
ラムネ飲む釣銭少し濡れてをり
流されてゆくは小鴨か佇つ我か
ハンカチーフきつぱりと言はねばならず