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廣岡あかね句集『りつしんべん
2016/12/25刊行

◆第一句集
悴みて立心偏のゆがみたり

あかねさんの句には随所に女性としてのこまやかで、やさしい心遣いが見られる。しかし、その心奥にはなかなか強いものがあり不可とすることには決して折れない心意気があるようだ。じっと何かに耐えるとき立心偏がゆがむのもそのためであろうかと思う。
(帯より・行方克巳)

◆行方克巳抄出
ゆたんぽを撫でて叩いて買はずに行く
いそいそと若手歌舞伎に春着の娘
つづら屋に膠の匂ひ竹簾
今日の白画布に足しけり花辛夷
木の芽風子は靴下を脱ぎたがる
春の雪降れ降れ用のなきひと日
春浅しカナリア色のエレキギター
剪定の梯子からから伸ばしけり
薔薇の鉢贈られ薔薇の本を買ふ
ギターケースに百円玉千円札落葉

中野のはら句集『象のうた』
2016/11/25刊行

◆第一句集
大阪が好きで嫌ひで蝉しぐれ
のはらさんのくったくのない俳句が私は好きだ。

銀杏枯れもうええやろと父逝きぬ
「もうええやろ」とは看取られる者の本音でもあり、感謝でもある。

終弘法ただでも要らぬ物も売り
一つの方向に固まらず、これからも自由にしかもつきつめた句を読み続けていって欲しいと思う。
(帯より・行方克巳)

◆自選十句より
寒灯を消させて父の身罷りぬ
うららかや象を見ながら象の歌
そこら中たんぽぽそこら中古墳
ポケットをあたためてゐる木の実かな
ショッキングピンクの春のショール欲し
何か言ひたくて黙りぬ梅真白
雲水の寒林を出で来たるごと
我を待ちくるる人ゐて冬あたたか
さりながら残花といふは痛々し
はつ夏の人見るためのカフェテラス

松枝真理子句集『薔薇の芽』
2016/09/22刊行

◆第一句集
ぐらぐらの歯を自慢してチューリップ
やがて
キャンプから帰りてもまだ歌ひをり
そして
マフラーを後ろできゆつと結ぶ子よ
お母さんと一緒にここまで成長してきた女の子は、これからは一人の女性として自分自身の道を歩み始めるだろう。そして園子と足並を揃えてきたお母さんには新しい地平が見えてくるはずだ。『薔薇の芽』に続く真理子さんの俳句の展開を見守ってゆきたい。
(帯より・行方克巳)

◆行方克巳抄出十句
亀の子の手足てんでんばらばらに
脇見してにこにこ走り運動会
マフラーを無理矢理巻いて送り出し
帰り来て遠足の地図辿りをる
人見知りしても人好きさくらんぼ
浴衣着て甘え上手になりにけり
凍星や悔し泣きの子誉めてやる
秋蝶の芝すれすれにすれ違ひ
赤ちやんがこんなにゐるよ秋日和
五十メートルとぶよと飛蝗見せくれし

栗林圭魚著 『季題拾遺』
2016/1/10刊行

「拾遺」とは、歳時記からあふれ出たあれこれを拾い補うことであると同時に、
季題の「周囲」の世界を展開し解明することでもある。
知的好奇心旺盛な俳句愛好家必読の本。
知っていたはずの季題の意外な側面が見えてくる。
まず、今の季節から読み始めよう。(西村和子氏推薦)

小澤佳世子句集『葱坊主』
2018/9/8刊行

◆第一句集
笑ふ夢見てゐる顔の風邪治る
『葱坊主』はまさに子育て春秋における佳世子さんの奮闘記である。
まことに子供というテーマは身近であってこれほど興味深いものはない。
(帯より・行方克巳)

◆行方克巳選
一ページめくる手袋外しけり
西瓜の種蹠にくつつけ眠りをり
わがままな強情な髪洗ひけり
新妻の居場所探しやトマト煮る
小さな口の大きなあくび今朝の秋
くせつ毛のもさもさ頭葱坊主
十二月主婦の蝦蟇口かさばつて
ぶらんこにつつぱつて人寄せつけず
吾子は泣きコスモスはご機嫌に揺れ
どんぐりを右手に一つ左にも

長 愛輝句集『帰郷』
2015/7/9刊行

帰郷してわが寝間となる夏座敷

第二の人生の六年間で得た七千余句の中からここに四六九句を選んだ望郷のうた。
老いて豊かな日常とは何か
これはその実体験の記である。

知音俳句会代表 行方克巳

鴨下千尋句集『月の客』
(つきのきゃく)

2015/6/28刊行

◆第一句集
人生の先達に捧げられた句は
みずからの足どりと
心の軌跡の表出にほかならない。
妻として母として女として
人生の午後の充実と幸福を
時にあそび心を交えて
詠い上げた作品は
詠む者の心も
豊かに明るくしてくれる。
(帯・西村和子)

◆自選十二句
畳替足裏うれしくもたいなく
心柱その年輪の国の春
クリムトに微熱もらひてビール干す
木枯やガラス工房赤を吹き
母の日や母のきれいな笑ひ皺
運動会放送席の晴れがまし
小鳥来る人住む家も住まぬ家も
聖夜劇天使の羽の引つ掛かり
竹林の底を流るる寒気かな
フランスの切手嬉しき初便り
万緑や異形のものの潜みたる
エイプリルフール薔薇買つて帰りけり