行方克巳第二句集
『知音』
1987/7/25刊行
第11回俳人協会新人賞受賞
卯辰山文庫
さびしさのかぎりを飛んできちきちは
月草は日盛りの花とも思ふ
教卓にどんぐり置いてありにけり
大いなるマスクを支へをりし耳
左義長のほたりと落ちし火玉かな
虫の夜の知音知音と鳴けるかな
雛の間をかくれんぼうの鬼覗く
アネモネのふくみし怒気に気付きたる
咲ききって十二単の居丈高
辛夷咲きセンターラインあたらしく
~あとがきより~
『無言劇』につぐ私の第二句集である。
顧みて、人をつき動かすに足る迫力に欠けることをさびしく思う。
しかしまた、それが自分の俳句のありようなのだとも思う。
とまれ、あたたかく大きく、そしてきびしい師の背中と、信頼できる友人達について歩めることは、何にもまさる幸せと言わなければなるまい。
自分の立脚するところを確かめつつ、ものごとをより深く見つめることを学んで行きたい。