原川雀句集『風の影』
2006刊行
天平の落書の春の埃かな
初陣のごとくに吹かれ白菖蒲
昼の虫日差はつかに衰へし
石臼に斜めに張りし氷かな
ポエジーを希求する第一句集。
客観写生にそれぞれの個性を
天平の落書の春の埃かな
初陣のごとくに吹かれ白菖蒲
昼の虫日差はつかに衰へし
石臼に斜めに張りし氷かな
ポエジーを希求する第一句集。
俳句の実作と鑑賞とは表裏一体のもの。名句鑑賞を通して俳句の楽しさを説く。
正岡子規から石田波郷まで、著名俳人25名の代表句を個性的な二人の俳人が自在に鑑賞。豊かな実作体験をふまえて多様な読みの可能性を秘める名句の真髄に迫る。知られざる俳人の境涯も俳句読解の魅力である。
夜桜や嫁の仕事を打遣りて
貝の華とはピカソかな太郎かな
昼顔の幸せさうに泣きさうに
ふしだらという香水のあらまほし
玩具箱をひっくり返したように、きらきらしている、いつまでも子供の心を失わない大人の俳句集。
初硯知足常楽筆太に
平らかに凍て滝壷を封じたる
さよならと踵かへせば花疲
子ら遠く夫亡く久し釣忍
深雪踏む彼方に希望持つごとく
生きている足跡を記した句集。80歳を期に、平成4~16年の作品を収録。
「虚子は18歳で京都に遊学以来、終生、京都を愛し、小説「風流懺法」をはじめ、随筆、紀行文を残した。祇園から比叡山まで、著者は20年がかりで虚子の作品の現場と人間模様を追跡し、そこで繰り広げられたドラマを再現する。虚子研究に新生面を開く意欲作。」
読みすすんで行くと朝露のようにきらりきらりと光るものがある―それは作者の俳句への思いそして家族への愛である。あえかな光だがどんな宝石よりも美しい―第一句集。
福寿草微笑み返しくれにけり
寄つて来し猫にやるものなく寒し
師の影のふと見えにけり鑑真忌
露草の一つ一つの希望の瞳
雲走る走る雲雀のこゑ散華
濤声もみどりなすなり鑑真忌
秋風に後れ先立つほどのこと
つはるてふこと怠らず冬桜
城を盗らずをみなをとらす花の雨
祭浴衣老獪にして汗かかず
椎の実や見えざる轍われを轢く
千秋といふはいちにち落葉踏む
海鳴るぞ山鳴るぞ春ゆくなべに
武者ねぶた瞋恚も恋も真つ赤ぞよ
~あとがきより~
平成13年4月から1年間の休暇を得て京都を中心に多くの祭りを見て廻った。いきおい本書の内容として祭の句が多いことから句集名は躊躇なく「祭」とした。
書家の津金孝邦さんからその「祭」の一字をいただいたことは、大いなる知音を得た思いであり、これにまさる喜びはない。
本句集が成るにあたって、さきの自注句集に引き続きて「樹の会」の仲間の全面的なバックアップを受けた。
また、角川学芸出版のスタッフのみなさんには短期間に集中して行程を進めていただいた。ここに記して感謝したい。
月見草胸の高さにひらきけり
夏シャツの胸ポケットに何もなし
若草に我がゴンドラの影進む
ウインドに映れる我等夏の雨
春暁の乳欲る声を漲らせ
泣きやみておたまじやくしのやうな眼よ
つまづきし子に初蝶もつまづきぬ
風邪の子の力なき眼が我を追ふ
気に入りのおもちや召し寄せ風邪の床
葱きざむ子の嘘許すべかりしや
粽解くにも弟の負けてゐず
蜜柑むき大人の話聞いてゐる
愚痴つぽく皹が又疼き出す
秋刀魚焼くレモンのやうな月が出て
ぜいたくは出来ぬ暮らしの柚子一つ
麦笛や夫にもありし少年期『窓』
花水木明日なき恋といふに遠し『窓』
来ればすぐ帰る話やつりしのぶ『かりそめならず』
ひととせはかりそめならず藍浴衣『かりそめならず』
職場の同期会の旅行で俳句に出会った仲間が、「知音」の初心者だけの句会「ボンボヤージュ」の卒業と還暦を記念して刊行。7人の個性が凝縮された合同句集。