怪炎を吐きたるごとし石榴割れ 磯貝由佳子
「海へ パラソル句会合同句集」(2019年刊)より
客観写生にそれぞれの個性を
「海へ パラソル句会合同句集」(2019年刊)より
『句集 窓』 牧羊社 1986刊 より
うしろにも気配よぎりし竹落葉
梅雨に倦み世に倦み船のピアノ弾き
もの書くはひきこもること蟇
蟇内なる闇をひきかむり
偸盗の手下(てか)の蝙蝠蟾蜍
蟇虚子亡きのちの闇を守り
庭先を江ノ電の音額の花
もてなしの雫残れる額の花
夏暖簾端近にして座持ちよく
青葉雨かつての家族写真にわれ
白玉を食ひに行こかと男どち
白玉や島原小町老いたれど
くつつきしままの白玉すくひけり
白玉やさらぬ別れのありといへば
メロンより西瓜が好きとにべもなく
龍馬あり左内ありし世雲の峰
原書購読五月の窓に背を向けて
藤田銀子
嫗出て傘干してをり藤の茶屋
山田まや
ありんこを潰す子ぼうつと見てゐる子
影山十二香
片付かぬ本の山増え梅雨湿り
松井秋尚
ちよとのぞくボクシングジム姫女菀
松枝真理子
船内にピアノ気怠く梅雨の航
牧田ひとみ
門灯の知らぬまに点き春も逝く
植田とよき
待合せ場所はコンビニ梅雨曇
塙千晴
ひきがえる暗がり増ゆる父母の庭
中津麻美
スタカットはた三連符花藻ゆれ
米澤響子
婚礼のマカロン摘む夏手袋
三石知佐子
ぼろ屑のごとく固まり軽鳧の子ら
植田とよき
じろつと見るあの女の目蟇
鈴木庸子
撓むとは耳打ちに似て竹の秋
中川純一
熱の子の汗拭きやれば薄目あけ
佐藤二葉
真白なテーブルクロス夏館
くにしちあき
硝子器にかへて早々夏気分
佐藤俊子
夏つばめ三尺路地の軒掠め
前山真理
糠雨に垂れて名残の花菖蒲
田代重光
袋角触るればぽつと灯りたり
米澤響子
フランスの古城ホテルに宿泊したのである。ヨーロッパにはすでに廃城となった建物を高級ホテルとして今に活かしているところが少なくない。シーツにもかつての城主たる印の王冠が刺繍されているのである。はたしてその夜の夢は如何に―――。
鉄砲は武器であり、水鉄砲は玩具である。水鉄砲から飛び出すのは水であり、誰を傷付けることはない。しかし、本来人を殺傷するのが目的である鉄砲という玩具を子供に与えることは、人殺しの練習を子供の頃からさせることでもある。こんなことを考えて子供に水鉄砲を与える親が居るとは思わないが私にはどうしてもひっかかる部分がある。それは最近の戦争が全くテレビの画面の中で行われているゲームみたいであるからだ。戦争の現場を全く体験せず、しかも大量の血が流れる殺戮が行われている事実がある。まるでゲーム感覚でしかない戦争の恐ろしさ―――。私はゲームの楽しさも何も知らないが、ボタン1つで相手を殺す殺人ゲームは人類の今後を象徴するものだ。子供は容赦なく父を追いつめ、父親や水鉄砲に打たれるたび複雑な思いを感じるのである。
のそのそと這い出してきた蟇を見とがめた犬がこいつは一体何ものだとばかりに近付いてゆく。犬はまずその鼻でもって相手が何たるかを確かめようとする。犬はまだ蟇は知らないのだ。もし蟇が飛ぼうとでもすればすぐにちょっかいを出すだろう。蟇はそのことをよく知っている。この蟇と犬の関係を、人間と人間の関係に置きかえてみるとおもしろい。
「2018年 知音1月号」より
「海へ パラソル句会合同句集」(2019年刊)より
「子らのゐて」(ふらんす堂・2019年刊)より
「句の旅へ」(角川学芸出版・2013年刊)より
「泥眼」(角川書店・2019年刊)より
「蝸牛」(角川文化振興財団・2017年刊)より
「ヘアピンカーブ」(ふらんす堂・2017年刊)より