西村和子第七句集『自由切符』
2018/5/30刊行
ポプコーン膝にこぼして春休み
光増しつつ白木蓮の花仕度
緑さす手書きメニューにハーブティー
鹿鳴くや茶粥の椀を置きたれば
2017年の365日を俳句と文章で綴る。ふらんす堂ホームページ『俳句日記』連載を書籍化。
◆シリーズ最新作
日々異なる季語を詠むことで、これほど日常を襞深く過したこともなかった。
3月8日(火)
光増しつつ白木蓮の花仕度
このあいだまで地味で瘦せた裸木だったのに、蕾がひとつ残らず膨らんで、一気にひらく日を今か今かと待っている。駅までの道がこの頃ほど楽しみなことはない。ある日いっせいに灯ともるごとく咲くのだ。
◆あとがきより
この一年ほど季節の移りゆきをこまやかに感じたことはなかった。日々異なる季語を詠むことで、これほど日常を襞深く過したこともなかった。六十代最後の年の何よりの記念になった。