知音代表 行方克巳が、この度、第八句集「晩緑」を上梓しました。
行方克巳第八句集
『晩緑』
2019/8/1刊行
朔出版
青葉雨 死もまた一身上の都合
「知音」代表の最新句集。「晩緑」とは、「新緑」すなわち初夏の若葉の緑に対して、終わりかけの緑を表す。人生の感慨を季語に託し、軽やかに詠いあげた第八句集。
◆自選12句
遠くより呼ばれて昼寝覚めにけり
致死量に足らざる鬱や秋かはき
狡猾な眼をして鮫のひるがへる
無味無臭而して無策冴返る
泥抽いて泥の光の蘆の角
茅花流し母のことその母のこと
万華鏡の中の秋風見てゐたる
柿一つ買ひ今生の秋一つ
鰭酒に舌焼き虚実皮膜論
都鳥水の火宅もありぬべし
北風やお日さまといふよきことば
立ち枯るる男たるべし荒野(あらの)打つ
◆「あとがき」より
「慶大俳句」に参加して、清崎敏郎師や、楠本憲吉、杉本零氏等の知遇を得て、俳句にのめり込んでから、またたく間に半世紀以上の歳月が過ぎ去った。
昭和、平成そして令和を迎えた今も、「季題発想」という私の作句信条は変わることはない。
また、俳句は「何を詠まなければならないのか」ではなく、「何をどう詠めばいいのか」であるという私の気持ちもは変わらない。
この度の句集名は「新緑」に対しての「晩緑」という心である。
もし、私の作品が人の心に届きにくいとしたら、それは私の表現力が至らぬためである。心して表現力を磨くことに励みたいと思う。