水の扉  成田うらら著

mizuno
ふらんす堂
2014年11月13日発行

紫木蓮売れぬまま家朽ちてゆく
台風ののろのろときて人攫ふ

現実を直視して決して逃げることのない誠実な人柄。

風船を割る象の眼の笑ひけり
土雛のでんと座りし団子鼻

日常の緊張から解放され、ほっと笑いがこぼれる時間は、
何ものにもかえがたい喜びでもある。
人生山あり谷あり。だから俳句が楽しい。

行方克巳(帯文より)

冬ざるる境内に樹の声もなし
水に散る光の破片十二月
水槽の河豚や人間値踏みして
綿虫につきてゆきたし浮かみたし
噴水の笑ふがごとく泣くごとく
鹿の眼のむかう向き耳こちら向き
みづすまし水の扉を開きゆく
ハンカチの正方形を疑へり
風船を割る象の眼の笑ひけり
柘榴落つ神に愛想つかされて
(自選十句)

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