驢馬つれて  井出野浩貴著

robatsurete
ふらんす堂
2014年9月21日発行

マフラーの緋を見送りしより逢はず
作者の胸裡のドラマティックな青春性とのきっぱりとした決別。

自転車でどこまでもゆく夏休
少年のように、がむしゃらに未知を志向するこころ。

いつかてふ日は訪れず鰯雲
いさぎよい覚悟は諦念にも通じる。

それらが三位一体となって展開してゆく、
井出野浩貴の俳句ワールドだ。

行方克巳(帯文より)

鉄橋のしづまり雲雀野にひとり
卒業す翼持たざる者として
夜桜の星へ旅立つかもしれず
グローブのオイルの匂ひ五月来る
冷奴ゆづれざることひとつ失せ
夏帽子選びてよりの旅ごころ
眠る子の膝にかさぶた天の川
葡萄売る石の都に驢馬つれて
この道の行く先知らず鰯雲
そのかみの密使の如く落葉踏む
聖樹の灯一番星に先んじて
冬の星一病を身に飼ひ馴らす
(自選12句)

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